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東北大学の支援・高度化の取組

東北大学大学院医学系研究科
地域イノベーション分野 教授 加藤幸成

 東北大学は、解析拠点・生産領域の大阪大学(課題代表者:高木淳一)の分担機関の1つとして、「動物細胞発現系を用いた高難度タンパク質生産支援と、糖鎖工学・抗体工学を用いたその高度化」という課題名で支援・高度化研究を行っています。東北大学(解析拠点・生産領域)の研究の日々の進捗については、東北大学大学院医学系研究科地域イノベーション分野のホームページで紹介しています(http://www.med-tohoku-antibody.com/index.htm)。

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 支援では、抗体作製支援および抗体の遺伝子改変・抗体精製を実施中です。結晶化のみならず様々な機能解析において、マウスやラットのモノクローナル抗体は大きな威力を発揮しますが、ネイティブタンパク質に高親和性かつ高特異度で結合する抗体の作製は非常に困難であるため、東北大学独自の抗体作製技術を駆使し高難度抗体の作製を実施しています。抗体遺伝子クローニングについては、マウスやラットのハイブリドーマから、1週間以内に抗体のcomplementarity determining region (CDR)の解読を行い、即座に各種キメラ抗体への改変等も行っています。また、ハイブリドーマ培養上清からのグラム単位の抗体生産も行っており、多方面の研究者の依頼に応じています。

 高度化研究においては、超高親和性、高特異性のアフィニティータグシステム(PA tagなど)の開発、高付加価値抗体の迅速作製技術(CasMab法など)の開発、構造解析のための新規糖タンパク質発現用動物細胞株(Gn-T1欠損株など)の樹立を中心に技術開発を行っています。すでにこれらの技術については、各支援にも活用しています。これまで、東北大学の支援・高度化の成果を複数報告しておりますが、今回、2月1日にプレスリリースされた、名古屋大学との共同研究の成果(膠芽腫に対する新たな治療法の開発 〜ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変T細胞受容体T細胞療法〜;Shiina S, Natsume A, Kato Y, et al., Cancer Immunol Res.;4(3):259-68.,2016)を紹介したいと思います。

 ポドプラニン(podoplanin)は頭頚部、食道、肺、子宮頚部の扁平上皮癌、精巣セミノーマ、悪性中皮腫など多くの悪性腫瘍に発現していますが、肺や腎などの複数の正常組織にも高発現しています。よって、通常の方法ではポドプラニンを標的とした治療が難しく、東北大学では、副作用を限りなく少なくするため、がん特異的抗体(CasMab)の作製を行ってきました(Kato Y and Kaneko MK, Sci Rep 4, 5924, 2014)。膠芽腫(glioblastoma)は、5年生存率が10%以下という極めて予後の悪い成人の原発性脳腫瘍です。近年、種々の悪性腫瘍において免疫療法が注目されており、膠芽腫に対してもその効果が期待されています。免疫療法の一つにキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法があります。この療法により、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に依存しない腫瘍特異的細胞障害性T細胞を大量に作製することが可能になります。膠芽腫を含む星細胞系腫瘍においては、ポドプラニンが悪性度に応じて発現が上昇するため、膠芽腫の標的として適しています。名古屋大学と東北大学の共同研究グループは、ポドプラニンに対するモノクローナル抗体NZ-1を基に、CAR遺伝子を人工合成し(NZ-1-CAR)、T細胞に遺伝子導入したところ(NZ-1-CAR T細胞)、NZ-1-CAR T細胞はポドプラニン陽性膠芽腫細胞株への抗腫瘍効果を示しました。本研究成果により、ポドプラニンを標的とするCAR T細胞療法は膠芽腫治療に有望であり、新たな治療法の開発が期待されます。

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 さらに、東北大学が開発したCasMabとCAR Tを組み合わせるという研究も実施中であります。このように、東北大学の支援・高度化研究は、まさに創薬研究に応用されつつあります。東北大学は解析拠点生産領域として支援・高度化研究を続けていきますが、単なるタンパク質や抗体などの生産にとどまらず、常に革新的な創薬を意識して事業を行っていきます。

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